フィレンツェの思い出 記憶の記録

 

記憶が引き出せなくなる前に記録をしておきます。


ミラノであまりにも倹約したため興が冷めていたのでフィレンツェに移動したとき自然と宿がグレードアップした(とても可愛らしい部屋だった!)。

食事も高級なところとまではいかないがリストランテとトラットリアの間ぐらいの少し落ち着いたところをとぶらぶらと歩きながら探して雰囲気の良さそうな構えの店を選んで入った。
通されたのが入口からすぐのバーカウンターに隣接した席で、金の無さそうなツーリストの格好だから値踏みされたかと憤慨していたら、隣のテーブルの女性たちが「この席も悪くないわよ(笑)」と言ってくれて恥ずかしかった。
いかにもイタリアのおっさんといった感じのカメリエーレ(ウエイター)に彼女が「魚を食べたい」と英語でオーダーすると、おっさんは俺に「シニョリーナはfishを食べる。おまえはmeatを食え」と言い、リスタ(メニュー)も読めなかったのでこちらは了解した。どのみち大衆食堂では複雑な料理は出て来ない。どうせ焼いた牛肉が出てくるだけだ。
サラダとパスタで既に腹はくちていたがドルチェまで食べた。が、どのような料理だったかまったく記憶にはない。さすがスパゲッティはフランスとは違ってまともだなとは思った。
ビネット(トイレ)に行くため少し仕切られた店の奥に入っていくと中はまあまあ広くて照明は暗く設定されテーブルは満席で人がたくさんいて圧倒された。
(そういう意味ではやはりここはリストランテとトラットリアの間だっただろう)
エントラータのバーカウンター付近のテーブル席スペースは照明が明るく、アペリティーヴォの前の一杯をカウンターで引っかけていく客ももうすっかりいない時間に俺たちは到着していたのでここは静かで窮屈な緊張はしないで済んだ。
カメリエーレのおっさんは中肉中背で特に二枚目でも三枚目でもなく灰色の髪をしていた。
姿勢正しくバーカウンターの中で静かにワイングラスを磨いていたが何脚目かでしくじってグラスを割ってしまった。音に驚いて俺たちが注目すると、カメリエーレは茶目っ気を見せ眉を上げ口元に指を立てたので我々は秘密を共有することになった。
俺のフィレンツェの思い出はこれだけだ。

 

以上にいくつか出てきたイタリア語は、25年以上前にマシェリからもらった「六カ国語会話」というポケットブックを久しぶりに開いて調べて書いた。

 


俺が今でも自信を持って言えるイタリア語は「イルコントペルファボーレ!」お会計お願いします、だけだ。

 

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フィレンツェのホテルの写真(だと思う)